さて、この旧フィアットアバルト595は、クラッチがノンシンクロであることを「VWタイプ2とフィアットアバルト595」で書きました。
ここでもう一度おさらいという意味で、ノンシンクロクラッチについて説明しておきます。
現代車のマニュアルミッションは「シンクロ」と呼ばれるもので、クラッチを踏みっぱなしでギアチェンジすることができます。
シンクロ式のクラッチで1速から2速にギアチェンジする場合、次の動作になります。
①クラッチペダルを踏んで、クラッチを切る
②シフトレバーを1速から2速にいれる
③クラッチペダルから足を離してクラッチをつなぐ
ATが主流なので、マニュアルの免許を持っている人は少なくなったと思いますが。
さて、このフィアットアバルト595に限らず旧チンクエチェントは、タイプRの後期以外は「ノンシンクロ」です。
ノンシンクロの車は基本「ダブルクラッチ」が必要になります。
ダブルクラッチというのは、たとえばギアを1速から2速に切り替える際、次の動作になります。
①クラッチペダルを踏んで、クラッチを切る
②シフトレバーを1速からニュートラルに戻す
③クラッチペダルから足を離してクラッチをつなぐ
④クラッチペダルを踏んで、クラッチを切る
⑤シフトレバーを2速にいれる
⑥クラッチペダルから足を離してクラッチをつなぐ
シンクロ式と比較すると、③④の動作が余分に必要になります。
これをやらずに現代車のような操作をすると、ギアを入れようとした途端、
「ガリガリッ!」
と音がして、ギアを痛めることになります。
さらに、1速に入れる際は、車を完全に停止させる必要があります。
これもノンシンクロ式の特徴です。
仮にノンシンクロの手順を使っても、完全に車を停止させないでギアを1速にいれようとするとさきほどと同じようにギアを痛めることになります。
もっとも大変なのは「シフトダウン」です。
シフトダウンする際には、「ブリッピング」が必須です。
「ブリッピング」とは、ニュートラルやクラッチペダルを踏み込んだ状態でアクセルを踏んで、エンジンの回転数を上げることです。
いわゆる「空ぶかし」です。
例として、ノンシンクロで3速から2速にシフトダウンする手順を以下に示します。
①クラッチペダルを踏んで、クラッチを切る
②シフトレバーを3速からニュートラルに戻す
③アクセルを踏んでエンジンの回転数を上げる
④クラッチペダルから足を離してクラッチをつなぐ
⑤クラッチペダルを踏んで、クラッチを切る
⑥シフトレバーを2速にいれる
⑦クラッチペダルから足を離してクラッチをつなぐ
これを一瞬で行わなければいけません。
ちなみにこのブリッピングをせずにギアをいれようとすると、さきほどと同様、ギアを痛めることになります。
最初はこのノンシンクロにかなり苦労しましたが、何ヶ月か乗ってみて、ようやく少しずつ慣れてきた感じです。
コツとしては、ダブルクラッチでのクラッチの操作は、それほど奥まで踏み込む必要はありません。
少しつないであげる感じでしょうか。
シフトアップの際の操作はなれてきましたが、シフトダウン時の操作はまだまだです。
考えながらゆっくりシフトダウンすればできるのですが、急な状況変化でシフトダウンしないといけないときは、かなりの確率で失敗しています。
ということで、なかなか操作がみにつかないのですが、こう考えることもできます。
ATは何も考えずにアクセルさえ踏めば動きますし、普通のMT車もそれほど難しくはありません。
そこに車を操る面白さや、醍醐味を味わうことはありません。
ですがノンシンクロの車は、操作が難しい分、操作がうまくできたときの喜びや充実感も大きい、ということです。
単なる移動が目的としての車ではなく(もちろん移動手段でもありますが)、車を運転すること自体が目的にもなりますね。